Design of everyday life(自分らしい生活をデザイン)

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怠惰は個人の資質の問題?

 人間関係で嫌なことがあった時、どんなにやらないといけないことがあっても、そのことが気になって集中できないことがあります。
 また身体がだるくてやる気にならないので、もっともらしい理由をつけて、いつもはやりもしない整理整頓などをしてしまったりもします。
 しかしそんなことをしていると、周囲からはそんな理由は言い訳で、単なる怠惰だと怒られてしまいます。自分自身で解決すべき問題だというのです。
 これが繰り返されると、自分自身でも自分を怠惰で駄目な人間だと感じ、嫌な思いをすることもあるでしょう。
 このようなやりとりは、親子間でもありますし、上司部下などの間でもよくあることです。
 このようなやり取りには何の問題があるのでしょうか。

 

 一番の問題は、出来ない原因を怠惰という個人の資質の問題としていること。そして解決策をその資質を変えることに求めているということです。
 しかし、実際怠惰というのは自分の反応、防御反応といえます。つまり、何かしら外的なものから自分を守っているのです。
 とすれば、防御反応を示している人を駄目だと批判するのは的外れです。何に対して防御反応を示しているのか?またそれに対処する方法は何かを考えた方が建設的でしょう。
 個人の資質の問題として批判している人は、実際は本当の問題点を特定できていない、具体的な対策が分からないから手っ取り早く個人の資質の問題にしてしまっているのです。

 

原因帰属の問題「基本的な帰属のエラー」


 人間には他者の行動の原因を考える際、行為者の内的要因を外的要因よりも重視するというバイアス(偏り)があります。これを社会心理学では「基本的な帰属のエラー」と呼びます。外的要因がどのくらい影響があるのかを正しく推測できないので、仮に外的な影響があったとしても行為者当人の意思によって容易に乗り越えられるはずと考えてしまいます。
 先の基本的な帰属のエラーのように人は外的要素を過小評価し、自分自身の考え方や環境が他の人にも適用されるものと考えてしまいがちです。しかし、人それぞれ置かれた環境は異なっているし、その人が培ってきた思考方法も異なっています。
 だから、その人がどのような環境の基にどのような思考をしているのかは、注意深く見なければ分かりません。具体的な解決策はまずそれを理解した上でないと分からないでしょう。逆に明確に問題点が特定でき、具体的な対策が分かれば、対策について冷静にアドバイスが出来るでしょう。
 もうひとつ、内的要因を重視するのは意識することなく自動的に起こるのに対し、外的要因を考慮し内的要因の貢献度合いを修正する過程、例えば集中出来ない原因を本人の怠惰ではなく周辺環境の原因が大きいと考えることは、認知的負担が必要なことが分かっています。これを社会心理学では属性推論モデルといいます。
 つまり、精神的に余裕がない人は、外的要因をなかなか考慮に入れることが出来ないということです。自分の組織に与えられた目標に追いまくられている上司が部下に指導する時、個人の資質のみを問題にして怒鳴り散らしていること、育児や仕事で余裕のない生活をしている親が子どもに対し、環境を考慮せず一方的に怒っている時などはこれに当たります。
 仮に他者から怠惰が自分の資質の問題のように言われたとしても、必ず外的要因と、そうさせる自分の考え方など内的要因が相まって起こっています。短絡的に判断するのではなく、原因、例えば心身の問題なのか、やり方が分からないなど方法の問題なのか、更には周辺環境の問題なのかを知ろうとすることが必要です。
 更にそのように他者から言われたときに、その他者が精神的に余裕のない状態なんだということを知ることも出来る訳です。
 「ああ、この人は余裕がないんだなあ。」と客観的に見ることが出来れば。少し冷静になれ、原因や対策も正しく見ることが出来るのではないでしょうか。