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書評:「アップデートする仏教」 藤田一照 山下良道 著

 今、「マインドフルネス」に興味をもっています。現代の仕事は細分化され、効率を求められ、個人のやりがいや目的感を求めにくいものになっています。その中で必要なのが「メンタルを整える」ということ。この流れの中で「マインドフルネス」という言葉を知ったのですが、実は仏教をベースとする用語。そもそも、自らの心、心構え、生き方というところで仏教についても関心があったので、この本は「マインドフルネス」、「仏教」、両方について非常に興味深く読むことができました。

 

 

 筆者は、現在の日本の仏教を「患者に治療を施さない病院」という表現で限界を唱え、仏教1.0と定義します。そして、海外、特にアメリカでの「患者に治療を施す病院に回帰する」仏教2.0を紹介します。筆者もアメリカに渡り、仏教本来の目的に回帰できたと感銘を受けています。
 しかし、仏教2.0も実は患者の本当の治療には貢献していないという課題を指摘します。それを乗り越えるべく、筆者は仏教1.0、仏教2.0を基礎とした新しい仏教3.0を提唱するのです。

 

 私が一番関心を抱いたのは、マインドフルネスの根本である、「物事を判断するのではなく、気付くこと」。そして、その「気付くこと」を実践する上での自らの心の置き方です。実はその心の置き方が、仏教、そして仏教1.0の本質なのです。
 「気付く」というのは、普通は主体が客体を「気付く」もの。しかし、それは判断している(シンキングマインド)のであって気付いてはいない。主体と客体が渾然一体となった段階で、はじめて気付くことができる。これを仏陀は「体の中で体を見る」と言います。その具体的なプロセスとして、「シンキングマインドを落とす」作業が必要であり、シンキングマインドを落としてはじめて、「主体がなくなった中で、客体に気づける何か」が意識出来るのだそうです。

 当然ですが、今の自分には「シンキングマインド」を落とすということがどういうことか、どういう身体感覚になるのかは全く分かりません。瞑想のメソッドにこれを求めるための作業があるのを知っているくらいです。
 しかし、多くの雑多なこと、情報、人間関係に埋もれた自分自身を見つめ直し、静かに身体の感覚を取り戻す作業として、瞑想や座禅は効果的だと感じています。その際の自分の気持ちの持ち方として、根底に意識しなくてはいけない事だと思います。

 

 そして、仏教1.0から仏教3.0に至る流れを知る中で、仏教の本質の一端についても垣間見えました。また、現代社会に仏教、マインドフルネスが求められる意味も感じることができました。