夫婦の絶妙な間合いで生活を存分に楽しむ大人の家
ご夫婦と大学生の娘さんの三人家族。
入り口に白のフィアット500(チンクチェント)。外観ととてもあっている。
外壁は土壁。流れを感じさせる塗り方。入り口の植栽。自然の雑木林をイメージ。玄関前にトップライト。ほのかに明るさが感じられる。
大谷石敷きの玄関ホール。奥さんのお父さんのコレクションの絵画がかけてある。奥には庭を眺める窓。
二階、踊り場にも家具や絵画。抑えられた天窓からほのかな光が差し込む。
リビングダイニング。間口がおさえられているので、光が優しい。天井のアールが流れを感じさせる。音響効果もあるとのこと。家具は先代からの受け継ぎで、趣があるものばかり。ゆったりくつろげる。
キッチン。広くはないが、パントリーもあり、収納がしっかり。
ダイニングは高さを抑えた木張りの天井。落ち着いた空間。奥さんの作った美味しそうな和食で、家族みんなが食事を楽しむ。
娘さんの部屋。猫二匹もくつろいでいる。前室は猫の遊び場に。
浴室。椹張り。タイルが濃紺。入り込む光も絶妙。全体にセンスが感じられる。
奥さんの部屋。入り口には大きなクローゼット。デッキ付き。外には沈丁花。風上のおいて香りが流れるようにしている。
和室。おじいさんの羽織の裏地を使って屏風にしている。狭いが囲まれた良い空間。
旦那さんの作業場。オートバイのレストアをやっている。好きなものが沢山飾っている。車庫からも入れる。車庫にもバイクが沢山。旦那さんの夢が実現。
三人の部屋には全て趣味空間が隣接。年代物の家具や絵画が素晴らしく似合う家。
渡辺さんのコメント
夫婦それぞれが趣味を持つ。奥さんのお父さんやお母さんが集めた家具や絵画を反映した家づくり。
建物には包容力がある。大人の世界。樹木を育てるには三四十年かかる。巨木なら百年。趣味も同じ。親が育てた趣味の世界を建物に反映させる。これこそ理想の佇まいじゃないだろうか。
旦那さんと奥さんとの関係が秀逸。奥さんがセンスの持ち主。家の大半の雰囲気を奥さんの趣味で構成している。旦那さんは独自の趣味空間を確保し、その中で存分に楽しんでいる。
お互いのテリトリーを侵食しない。歳を経ると、夫婦の関係も変化してくる。互いの間合いを十分分かった上で、包容力をそれぞれが持ち、存分に楽しんで生活する。こんな生活を将来してみたいと思える家族そして家だった。
夫婦の絶妙な間合いで生活を存分に楽しむ大人の家。
陰影を楽しむ大人の家(埼玉県さいたま市・関根邸)
■渡辺篤史の建もの探訪
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/18
■伊礼智設計室
http://irei.exblog.jp/